任務のための夜更かし
いま、12月24日の27時、すなはち25日の未明なり。
かやうなる時間に起きたるには一つの理由あり――家人の寝静まるを待ちたるなり。
しかるに、何ゆゑに家人の寝静まるを待ちたるか。それは今日の日付けを見るに明白なるべし。しかり、相手に悟られざるやうに枕元にプレゼントを置かんがためなり。
子供の頃は、クリスマスは年に一、二をあらそふ楽しみなりき。「サンタに何を貰ふべしや」、これは一年の内の短からざる期間に我が胸中を占めたる重要議題なりき。されど長ずるにつれて、クリスマスへの特別なる感情は急速に薄れゆきたり。
しかるにここ数年、再びまたクリスマスが吾人にとりて大きなる意味を持つやうになれり。さうしてその意味は、幼かりし頃とは趣を全く異とするものなり。
かつては、プレゼントは貰ふことにのみ価値のあるものなりき。対するに、今の吾人にとりてのクリスマスの楽しみは、プレゼントを贈ることにあり。贈ることには貰ふことに勝る楽しみのあるなることを知りたるは、大人になることの価値の一つと思はる。
無論、人に贈り物をすることはクリスマスに限りたることには非ず、また大人にならざる以前より経験もあり。しかるにクリスマスのそれを特別たらしむるものは何か。
それは、他の諸々の贈り物がただ吾人よりの贈り物なるに対して、クリスマスの贈り物は、吾人よりにはあらで「サンタクロースよりの」贈り物なりといふ点なり。この日、吾人はただ人に贈り物をするにはあらで、サンタクロースの一人として、その任務を全うす。
ここに、いはば社会の幸福の形成の一端を担ふとでもいふやうなる、誇りと感慨とをもよほしたるなるべし。
さてそろそろ仕掛けに向かはん。