文語文 練習帳

文語文を用ゐてエッセイ的の文章をつづる練習帳。

歯ブラシはヘッドの薄き。

 先日テレビを見たるに、CMにて岡田准一かく訴へたり。

 「歯ブラシはヘッドの薄さこそ重要なれ!」

 これを聞きし時、吾人かつは驚きかつは呆れたり。

 今までヘッドの薄さを重んずる宣伝文句、つひぞ聞きたること無かりし。それをさも以前より認識したるがごとく言ひ募る、これ厚顔と言はざるべけんや?

 せめて「我が社はこの度『歯ブラシはヘッドの薄さ重要なり』と気付くに至れり」と言ふべし、と思はるるなり。

 さて折しも歯ブラシを交換せんと考へたる時期なれば、件の薄ヘッドのものを購ひつ。試みるに、確かに奥歯を磨く時の動きに自由度を増したるようにおぼゆ。競合他社も宜しくこの方面を追究すべし。

 またスーパーマーケットやドラッグストアにて見るに、歯ブラシのバリエーションの甚だ多きに半ば閉口せらる。ここに「薄ヘッド」といふ一つの判断基準の得られたるは幸ひなり。

 それにしても、歯ブラシなぞといふ最早 進化すべからざるやうに思はるる道具にもなほ思はぬ改良の余地ありきといふことは、なにか未来への希望を抱かするニュースのごとく吾人には思はれたり。