文語文 練習帳

文語文を用ゐてエッセイ的の文章をつづる練習帳。

シン・エヴァ目撃せり

[注意] 本稿は映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』につきてのものにして、いはゆるネタバレを含めり。

 

 映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を近所の映画館にて鑑賞す。ネタバレを避けんがために公開初日の鑑賞とせり。平日といふこともありてか、チケットは問題なく購ふことを得。

 一言にて言はば、興奮措く能はざる、格別の映像体験なりき。

 2時間半といふ長尺の作品とて、吾人 厠の不安大きければ通路側に席を取りたれども(少なくとも2度は退席することを覚悟せり)、幸運の故か作品に集中したる故か、1度も退席する必要をおぼえざりき。

 さて、本作につきて特筆すべきことは煎じ詰めたらばただひとつ、「投げっぱなしにせずしてシッカリと終はらせつ」といふことなり。広告にありし「さやうなら、すべてのエヴァンゲリオン」とは、つゆ偽りにはあらざるなり。

 新劇場版は、「序」のころより「今回は大団円にす」と公言せりとは記憶したるものの、まさかそれを本当に実現せしむとは! しかもエヴァらしさを損なはずして、と、大いに驚嘆せられき。

 全体的に見ても本作は、娯楽性を大いに備へつつもエヴァとして違和感なく、ファンにとりても未体験ながら拒否感を催さざる、いはばあらまほしき新作にして完結作なりと思はる。

 

 吾人いま言ひたきことは、おほむね以上なり。とりあへず近々また見に行かんとす。 

 

 以下、こまごまとしたること。

・目覚めたるシンジに語りかくるトウジを筆頭に、「村」のシーンは人々の優しさに満ちをり、あの殺伐としたる『Q』の雰囲気より救はれたるがごとくおぼえて、吾人の涙腺をいささか刺激せり。

・「そっくりさん」の腕カバーのシーンは劇場にてもウケたりき。

・佳境の、シンジがミサトに「リョウジ」の話をしたるシーンには思はず感涙せり。シンジの成長を示すものにもありて、本作の最重要シーンの一つかとも思はる。

・ゲンドウが物語より「下車」するくだりも見事なりき。求め続けたる亡妻のすがたを、彼が背を向け続けたる息子の中に見出せるあっけなさよ。

・またこのシーンにつきては、「父と子の対話」おこなはれたるなるが、その前にケンスケがシンジに「父と話をすべし」と勧むるシーンありて、「なんと非現実的な」と(観客もその場に居たるアスカも)思ひたるも、それが終盤に実現してクライマックスに向かへるも大なる驚きなりき。

・まったくの余談ながら、終劇後に拍手したるは、吾人といま一人ほどなりき。吾人は面白き映画を見たる後は拍手したしと思ふも、なかなか勇気いでずして実行すること少なし。今回も拍手する人はほとんどなし。なにとなく寂しく思はるるも、映画のマナーにつきては個々人の考への相違大きければ、深追ひはすまじ。