文語文 練習帳

文語文を用ゐてエッセイ的の文章をつづる練習帳。

マーフィーの法則

 吾人 幼時よりスニーカーを好めり。殊にニューバランスに対しては信頼を超えて信仰に近き思ひを成したれば、10歳頃より今にいたるまで20年余、吾人の足元は色こそ幾度も変はりたれどNの字 失することなし。

 スニーカーの利点は言ふまでもなく履き心地の良さと着脱の容易なるとにあり。かたや欠点は、スーツに似合はざると雨に弱きとにあり。前者につきては、スーツを要せざる職種につくことによりて吾人これを解決せり。しかれど後者につきては如何ともしがたし。ひとたび降れば靴下まで濡るるに甘んじ来たる、受け身の人生なりき。

 

 この解決策として2年ほど前に導入したるが、パラディウムなるメーカーの「PAMPA PUDDLE LITE WP+」といふ靴なり。これはスニーカーとゴム長靴のあひの子と言ひつべきものにして、スニーカーの見た目と履き心地ながら、甲の部分はゴムなれば水を弾く。 

 効果は確かにして、これを導入して以来、雨の日に靴下を濡らすこと絶えたり。蒸れがちなるが短所なれば常時これを履かんとは思はざれど、雨対策としては必須のものとなれり。

 ただし、この靴の真に有益なるは、上記のごとき実際的効果よりもむしろ、その呪術的効果にあり。

 すなはち、天気予報なり空模様なりを見て、「今日は雨降るべし」と判じてパラディウムを履きて外出するに、大抵 雨は振らざるなり(言ふまでもなきことなるが、「今日は大丈夫ならん」とて普段のニューバランスを履きて外出せば、しばしば降雨に見舞はる)。

 要するにパラディウムを履くことは雨降りの対策となるのみならず雨降りの「予防」ともなるなり。良き買ひ物なりきと言はざるべからず。

 

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