文語文 練習帳

文語文を用ゐてエッセイ的の文章をつづる練習帳。

鳥見

 吾人が今年始めたる趣味の一つに「鳥見」あり。いはゆるバード・ウォッチングのことなるが、文語文のため吾人が無理に漢語にしたるには非ずして、この趣味の人には今なほ用ゐらるる語なり。

 かねてより鳥に関心は有り、殊にアヒルカルガモなどの水鳥を愛好せり。ただ鳥の識別の知識は殆ど無きに等し。

 関心を深むるきっかけは吾人の住みたる地域にて行はれたる鳥見の会なり。今年の初春に何気なく参加したるが、思ひのほかに良きイベントなりき。日本野鳥の会の会員ら指導役として幾人も参加したりて、彼らが目敏く見付けたる色々の鳥を、彼らが適切に設置し呉れたる高級の望遠鏡にて見ることを得。またそれらの鳥の名を一つ一つ教へ呉れたること勿論也。

 これら、いづれも素人には成し得ざることなり。素人はまづ鳥を見付くる能はず。もし見付くとも双眼鏡を適切に合はする能はず。もし合はすとも貧弱の器具にては精彩に見る能はず。もし精彩に見るともその鳥の名分からず。

 この有意義なる会の帰り道に、近隣に生息する野鳥を紹介せる小冊子を早速購ひて、近所を歩く時には鳥への注意を増しつ。また時々は双眼鏡を携ふることもあり(ただし比較的山の方へ足を伸ばしたる時のみ。住宅地にて双眼鏡を使ひたらば目的を誤解せらるる恐れ有ればなり)。

 今まではスズメ・カラス・ハト・ツバメ・トンビ以外の鳥は知らざりしを、ムクドリメジロセグロセキレイヒヨドリイソヒヨドリシジュウカラ等、水鳥にてはカルガモやサギ以外にもマガモヒドリガモオオバンキンクロハジロカイツブリ等をやうやう覚えたり。これらあまりに平凡の鳥なりと玄人は定めて笑ひぬべけれど、吾人にとりては長足の進歩にて、身の回りの鳥たちへの認識を深め目を一層楽しましむることを得つ。

 吾人は(差し当たり)鳥見に珍しさを求むる者に非ざれば、スズメなりとも面白く見たるが(彼らの水浴びの可愛さよ)、珍しき鳥に遭ひて感興を催すことも無論有り。その点、これまでのところジョウビタキを二度見かけたるは嬉しき思ひ出なり。

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ジョウビタキ

 幼時、吾人の家にキビタキの置物あり。一度見てみたき鳥なり。