文語文 練習帳

文語文を用ゐてエッセイ的の文章をつづる練習帳。

ウルトラマンZ

 吾人が『ウルトラマンZ』を視聴し始めたるは全くの偶然に由来す。

 七月のある金曜日、吾人は積もりたる仕事を脇目にウインダムについて検索し居れり。言ふまでもなくウインダムは『ウルトラセブン』に登場せるカプセル怪獣の一也。『セブン』を見たる人には周知の通り、極めて愛嬌ある動きをするキャラクターにて、吾人兼ねてより彼を愛好せり。かの日の検索の理由は記憶せざるも、何がしかのグッズを見付けんとてのことなるべし。

 さて検索の結果、なんと現在(当時)放映中の最新シリーズにこのウインダムが”出演”したることを知り、驚きたり。そのシリーズこそ件の『ウルトラマンZ』なれ。

 折しも翌土曜日の朝に最新話(第5話)放映せらるとて、試みに視聴せり。否、正確には、その前に予習せんとてYouTubeにて公式に無料公開(当時)せられたる第1、3、4話を見、残る第2話もバンダイチャンネルに課金して視聴せり。速やかに魅了せられたりと言ふべし。

 なほ第1話は現在も無料公開中なり。質高きものなり、優れたオープニングと言ふべし。


『ウルトラマンZ』第1話 特別配信「ご唱和ください、我の名を!」 -公式配信- "ULTRAMAN Z" Episode 1 -Official-

 さてその後、『ウルトラマンZ』はドンドン人気を上昇せさせ、「ネット流行語 100」なるものの第6位を占むるまでに至れり。

 本作の魅力はいづくに有りや。"昭和世代"に馴染みあるキャラクター多きことは、確かに一因たるべし。主人公は無論ウルトラマンZなるが、彼は様々なるウルトラマンの力を借りてパワーアップす。ウルトラマン、セブン、エース、タロウ、レオといった御仁也。また怪獣も積極的にこの時期の怪獣を取り込めり。『ウルトラQ』からペギラカネゴン、ケムール人等々、『マン』からゴモラレッドキングブルトン等、『セブン』からキングジョー(無論ウインダムも)と言ひたる具合也。これらは、いはゆる昭和ウルトラシリーズ世代のファンを引き寄するに以て余り有り。

 されど、本作が吾人を魅了せる理由はそれのみに非ず。

 例へば、特撮の面白さも重要也。吾人は特撮の戦闘の面白さは光線類よりもプロレス的取っ組み合ひに在りと考ふる者なるが、その点、ウルトラマンZが幾つかの姿にバージョンアップする中で、ベータスマッシュ(懐かしのウルトラマンゼアスに似たる姿也)はまさしくプロレスをそのまま採り入れたるファイティング・スタイルにて吾人の好むところ也。また戦闘中はカメラワークの面白さにも唸らせらるること多かり。CGを効果的に用ゐながらも特撮を追求せる点、好感を持てり。

 加之(しかのみならず)、物語と登場人物との質も高し。

 殊に主人公ハルキの魅力大なるは特筆に値す。彼の純朴快活なるキャラクターが作品に寄与するところ極めて大なりと言ふべし。また彼が怪獣退治といふ任務の是非に苦悩したるくだり(数話を費やせり)には大いに引き込まれたり。

 この部分はシリアスな調子なりしが、全体的には大いに明るいムードを持ちたる作品にして、「楽しきウルトラマン」也と言ふべし。無論すべての話傑作なりと言ふにはあらねど、総じて言はば、三分の二ほどの話は吾人にとりて充分楽しむに足るものなりきと記憶す。

 これを書きたる本日、本編は最終話(25話)を迎へたれど、最終2話の盛り上がりもまた極めて特筆すべきあり。ここに記さざるも、いはゆるグッと来るポイント、熱きポイント随所にありて、大いに満足せるクライマックス/エンディングなりき。

 

 なほ余談ながら、そもそもの視聴のきっかけたるウインダムの活躍は、残念ながら吾人の期待には及ばざりき。ウインダムの魅力は、張り切りたれどもなかなか成功せざる、ドジなる愛嬌に在りとす。『ウルトラセブン』第1話「姿なき挑戦者」や第24話「北へ還れ!」を見られよかし。

 しかるに本作のウインダム(カプセル怪獣にはあらで特空機(ロボット兵器)として登場せり)は、格好良くはあれど動きに愛嬌乏し、むしろ愛嬌は別の特空機なるセブンガーが存分に担ひたれば也。このセブンガーもまた本作の魅力の一因たること疑ひなければ、人気を受けてグッズが色々と販売せらるるも尤もなれど、望むべくんばウインダムのグッズも多く有らまほしき也。ソフビのみならで高級路線のフィギュアもあらばやと思ふ。

 

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アマビヱに非ず